シュトレンって何?
シュトレン(Stollen)とは、ドイツ発祥のクリスマスシーズンに食べられる定番のお菓子のこと。日本ではクリスマスと言えばクリスマスケーキが定番ですが、ドイツではこのシュトレンが定番です。
シュトレンはドイツ語で”坑道”を意味し、トンネルのような形をしていることが由来だと言われています。そして真っ白に粉砂糖がかかったシュトレンは、本場ドイツでは「白いおくるみに包まれた幼子イエス・キリストに似ている」と言われ愛されています。
一般的なシュトレンはずっしりと甘く、生地にはドライフルーツやナッツ、ラム酒などが練り込まれ、たっぷりのバターを含んで焼かれます。焼き上がるとまたバターをたっぷりと塗り、粉砂糖をまぶし真っ白にコーティングされます。(聞いただけでも甘くておいしそうですが、そのカロリーには要注意。)
どのように食べるもの?
本場ドイツではクリスマス前の4週間を「アドベント」と呼んでお祝いをし、そこでシュトレンを薄くカットし、家族や友人と一緒に食べるのが風習となっています。
4週間かけて少しずつ食べるため、長持ちするよう作られているのがシュトレンの特徴です。その過程で熟成が進み、フルーツなどの香りが馴染み、時間とともに味わい深くなっていきます。
クリスマスまで味の変化を楽しみながら食べるなんて素敵ですよね。ワインや紅茶との相性も抜群で、少し大人味のケーキのような感覚で日本でも人気を呼んでいます。
砂糖も卵もバターも使わない
わざわざのシュトレン
ここまで一般的なシュトレンのお話をお送りしましたが、わざわざのシュトレンは味もコンセプトも一般的なものとは異なります。
一番大きな違いは、卵・砂糖・バターを使わずに作ること。アレルギーでシュトレンを食べたことのなかった方にも召し上がっていただけるということで好評を頂き、今ではわざわざの年末の風物詩となっています。
では、卵・砂糖・バターなしで作り始めたきっかけは何だったのか?
話はわざわざが創業したばかりの2009年に遡ります。代表・平田は「世の中でどうやらシュトレンなるものが流行っている」と知り、市販のものを一つ買ってみることに。
クリスマス前に購入して少しずつカットして食べる、といった“クリスマスを楽しみに待つ”シュトレンの文化に面白さを感じたのです。その保存性の高さにも興味がありました。
けれど甘いものが苦手な平田は、どうしても洋菓子のバターと白砂糖が多用された市販のシュトレンが口に合わなかったのでした。ただ、ドライフルーツは気に入ったし、クリスマスの時間を待つコンセプトはやっぱり面白い。
どうしてもシュトレンを食べてみたくて、自分のために砂糖を使わないシュトレンの試作を始めたのが最初でした。ドライフルーツとナッツのケーキを参考にしながら、砂糖なしならバターもなしで、バターなしなら卵も使わずに、と次第に試作はエスカレート。
主な材料である3つを使わずに作るシュトレンはもはやシュトレンと呼んでいいのか分からないけれど、どうせなら健康的な材料で、甘いものが苦手な人だけでなく、アレルギーを持つ人にも届くシュトレンを作ってみたい。それが、わざわざのシュトレンの始まりでした。
16年目を迎えました。
わざわざのパン・お菓子のレシピの中でも、シュトレンほど試作を繰り返したものはありません。特に、甘さと保存性を高めることが課題でした。これは、白ワインに漬けたドライフルーツのシロップをそのまま使うこと、そして水分を吸って保水してくれるココナッツを大量に使うことで解決。
試作の末、ドライフルーツの凝縮された甘み、国産小麦の甘み、自然の甘さだけで甘さを感じられるものに仕上がりました(砂糖をまぶしたような表面の白い粉は、実はライ麦の全粒粉なので甘くないんです)。
使う白ワインやドライフルーツの内容を検討するなど、配合は今でも調整し続けています。おいしくて安心安全な材料でありながら、お客様の手に届きやすい量を作ること、手に取りやすい価格帯であることにもこだわるためです。
このシュトレンを作り続けて16年目。開業当初、数十本から作ることがやっとだったシュトレンは、2013年までは手ごねで600〜800本。2014年からはミキサーを導入し、今では週に400本以上を安定して作れるようになりました。
品質テストを繰り返すことで、賞味期限も6か月間に(未開封の場合)。おいしさが増した2週間熟成後のものをお届けしても、賞味期限を気にせずじっくり味わっていただけるものとなっています。
渾然一体となった素材の香り
シュトレンに使う材料はたくさんあります。ドライフルーツは8種あり(レーズン、カレンツ、いちじく、クランベリー、いよかんピール、ゆずピール、プルーン、アプリコット)、他にもくるみ、ココナッツ、自家製酵母、シナモン、クローブ、ナツメグ、かぼちゃの種…などなど。
わざわざの作るパンやお菓子は基本的に材料の種類がかなり少ないので、これだけバラエティに富んでいるのは、わざわざの中では異色です。でもそれらが渾然一体となったこの香りは、他にはない独特の芳しい、い〜い香りなのです。
ドライフルーツは白ワインに漬け込み、約1ヶ月寝かせて味を馴染ませます。材料が多い分、作る時にはかなり気を遣います。どれも高価な材料ばかりなので、もし一つでも材料を入れ間違えたら、そして全てが台無しになったら…と考えると戦慄します。
1本1本を大切に
焼く時にもかなり集中力が要ります。なるべく効率よく作るため、焼く時は窯の中にぎっしりとシュトレンを並べます。一つ一つが離れすぎると全てを焼ききれないし、くっつきすぎると形が崩れたり生焼けのリスクがあります。
ほどほどの距離感を保ちながら、1本ずつやさしく置いて(焼く前のシュトレンは、実はかなり柔らかいのです)、焦げない様に数分おきに様子を見る。それを繰り返して1日200本以上焼いていると、だんだん無の境地に入ってきます。
一度に焼けるのは60本まで。窯に入れる時は1つずつ、出す時も1つずつ。しっかり焼けているか確認しながらなので、時間のかかる作業です。しかし、それだけでは終わりません。
焼けたシュトレンが冷めたら、今度は検品には入ります。焦げていないか?灰が付いていないか?形が崩れていないか?などをチェック。その後は袋に詰めて、脱酸素剤も入れた上で脱気します。
このダッキー(※社内用語)をすることで、大幅に保存性が高めています。何年もの試行錯誤の末この方法にたどり着き、カビが生えるといった品質問題がなくなってきたため、現在は未開封での賞味期限を6ヶ月としています。
焼き立ての頃はまだフルーツパンのようなシュトレンですが、時間が経つとドライフルーツの味が馴染み、しっとりと滋味深い味へと変化していきます。わざわざでは一番おいしい時期に渡せるように、焼いてから2週間置いたものを販売しています。
このようにわざわざのシュトレンは時間とともに熟成していくので、買ってすぐ食べる分と、買ってからさらに保存して熟成させる分と、両方を用意してみると違いがあって面白いと思います! どちらもおいしいのですが、それぞれの良さがあります。
食べ方いろいろ
わざわざのシュトレンはそのままシンプルにスライスして食べるのも美味しいですが、いろんな味わい方を追求してみるのも楽しみの一つ。
滋味深い大人の味のシュトレンはワインに合わせるのがポピュラーですが、それ以外にもおすすめの食べ方はいろいろあります。
手軽で幅が広がるのは、スライスしたシュトレンにお好きなものをのせていただくスタイル。りんご・みかん・いちじく・ぶどうなどのフルーツや、くるみなどのナッツ類、そしてチーズ・生ハムといったパンに合うものも相性抜群です。
お次はスライスした焼きりんご、水切りヨーグルトにNOVAのグラノーラをまぶし、スライスしたシュトレンをのせてメープルシロップまたはハチミツをかければ、おやつとしても最適なミニパフェに。こちらはお子さまにも喜んでもらえること間違いなしの食べ方です。
シュトレンがお手元に届いたら、まずはそのままをじっくり味わって、自分好みの美味しい食べ方をどんどん試してみてくださいね。わざわざのシュトレンは時間とともに熟成していくので、買ってすぐ食べる分と、さらに保存して(最長6ヶ月)熟成させる分と、両方を用意してみると味に違いがあって面白いです。