「乙なもの」と呼びましょう
「乙」という文字には様々な意味があります。
- 何かと比べて2番目であること。
- ちょっと気が利いていて趣のあるさま。
- 道理・理屈。
- 物事の具合、調子。
全国各地の工場を訪問する中で、多くの工場に行き場のない在庫があるという事実を目にしてきました。厳しい検品基準を満たせずに正規品から除外された商品が数多く残っていて、工場の方々の悩みの種になっているのです。
しかしそうした商品の中には、「不良品」とするにはあまりに惜しいような、使用する上で全く問題のないものが数多くあります。たしかにちょっと訳ありだけれど、それも見方を変えれば、他と違った個性のうち。
そう思える商品を「乙なもの」として、わざわざが工場から買い取り、きちんとご説明した上で販売するという取り組みを2019年からはじめました。以来、メーカー各社ご協力のもと、乙なものをセットにした特別企画「乙なもの箱」の販売など、お客様にも喜んでいただける形を模索しながらこの取り組みを続けています。
味わいを愛おしむ文化をもう一度
日本には「あばたもえくぼ」という諺があります。「侘び寂び」といったわびしいことや悲しげなことの中に美しさを見出す言葉もあります。また、陶磁器には古来から、焼きむらや釉薬のたれを「景色」と呼び、愛でる文化も醸成されてきました。
大量生産消費の時代にクレームとなる怖さから、メーカーは検品基準を上げて日本のものづくりの品質基準を上げてきました。ですが、工業製品でもよいとされるものを100%作れるわけではありません。あばたや侘び寂び、焼きむらが存在することがあります。
人間が一人ひとり違うように、生まれた商品も全て均一に製造されるわけではありません。そんな当たり前のことを忘れてしまうのは余りにも悲しいことではありませんか。
許容値を広げ、あえて普通とどこか違ったものを愛おしむ文化をもう一度とわざわざは考えています。わたし達は、甲乙丙の基準の中の乙まで販売しても使用に問題がない「おつなもの」として、これからも正規品として販売していきます。
乙なものを買うということ
乙なものを購入すること。それは、行き場を失ってしまった商品を受け入れること。そして、工場・製造元、ひいては産地・地域を支えることに繋がります。この取り組みが1人でも多くに広まり、購入してくださるお客様が増えることで、工場の方々が抱える悩みの種はひとつずつ解消されていくはずだと考えています。
乙なものであっても、関わる人の多さは正規品と変わりません。木製品であれば産地で木を育て木材となるところから始まり、工場や職人たちが製造を担い、そしてメーカー、販売店へと渡っていきます。その間を物流などでつなぐ人もいますし、産業があなたの町を支えていることもあるでしょう。
一度、お金を使って「ものを手に入れる」という行動に留めることなく、お金を通して「ものを手に入れるまでに関わってきた人」を思い描いてみませんか。
楽しみにしていたわざわざさん @waza2stock の乙なもの箱 其の弍が届きました。少しでも日本のものづくりの支えになればと思い購入を決めましたがぜんぶ使えるものばかり。わざわざさん、ありがとうございました◎#乙なもの #東屋 #松野屋 #育陶園 #藤芸 #ハサミポーセリン #アイザワ #KINOF pic.twitter.com/9P8i3YXOfK
— 庄子 さおり|京屋染物店en・nichi (@shoji_ennichi) January 6, 2022
わざわざでは「お金はコミュニケーションのツールである」と捉え、お金を渡した先には何があるのか想像することを大切に考えています。「訳ありだから」という理由で見放されてしまえば、ものづくりに関わった人のもとへお金が渡ることもなくなってしまうでしょう。
「訳ありだけれど使用上問題がないもの」に対し「乙だね」と価値を見出し、そこに購買が生まれることで、お金は関わった人たちのもとへ正当に渡っていきます。
そしてお客様は「乙」である分、少しお得に製品を生活に取り入れることができます。渡ったお金が、お客様も含め、関わった人たちが暮らす社会に還元されていく。乙なものの購買を通じて、そんな循環を感じていただけたなら嬉しいです。
例えばこんな乙なもの
上記で挙げた以外にも様々な理由で「乙なもの」となった商品をお届けします。日常で使用する分には問題のない商品たちをぜひご家庭で愛用いただけたら嬉しいです。
アップサイクルの意識で
乙なものを販売すること。それは単に値引いて販売し、眠っている在庫を減らしたいという取り組みではありません。
使用上問題はないものの、検品基準をわずかに満たさなかった商品について、ハサミポーセリンは「『B品として販売』ではなくアップサイクルの意識で販売していきたいと考えている」と話していました。わざわざの乙なもの箱へも、その観点から賛同とご協力を頂きました。
「乙なもの箱」の企画趣旨を各メーカーさんにお伝えしたところ、私たちが当初想定していた以上の数の乙なものが集まりました。1点1点丁寧にものを作り、検品し、お届けしているメーカーさんが多いからこその、細部まで妥協のないものづくりを改めて感じます。その背景には少し個性を有した「乙なもの」もあるということを、きちんとお客様へ伝えながら販売機会を増やしていきたい。
例えば贈りものには不向きかもしれないけれど、家庭で使う分にはまったく気にならないという方もいらっしゃるかもしれません。乙なものが持つ個性と同じように、私たちにも一人ひとり異なる考え方や感じ方があります。多様な考え方、多様な選択肢のひとつに「乙なもの」を加えていただけたなら幸いです。
乙なものという選択肢があることで、知らず知らずのうちにモノに対して寛容になっていて、ものづくり全体への助けにもなっていく。このような循環になればという思いです。「ものづくりを応援したい」「少しお得に購入できるから」「気兼ねなく使えるから」。どんな理由であっても乙なものを選択肢に入れてくださる皆さんに感謝をお伝えしたいです。
開けました。しっかり使えるものが、お得に購入できて大満足。ハサミポーセリンのプレートとボウルセットは、お重の代わりになりそう。今年はお花見できるかなぁ。#わざわざ #乙なもの pic.twitter.com/VNjgRaX3Zu
— ユウ (@ldgBooks) January 10, 2022
乙なものが届いて、「これなら全然気にならない」と乙な理由を許容してくださったり、「なるほど、乙だね」と魅力を感じてくださったり。実際にそんなお声をお客様から頂いており嬉しいばかりです。