角りわ子(陶芸)
陶芸家の角りわ子さんの作品の特徴は土と意匠。陶土に工房の山の土を用い、粘土から作っています。 鉄分が多く、粘土質の高い独特な陶土が、こだわって調合して作られた釉薬に反応し、様々な質感を作ります。 何度も何度も塗り重ねられながら、作られた細やかな意匠は素晴らしい完成度です。 私も愛用しておりますが、薄作りでありながら、とにかく強い。丈夫で割れにくく驚きます。 質感がとてもよく、長くご使用頂くとどんどん育つ楽しみがあります。
角りわ子 プロフィール
1961 鳥取県境港市生まれ
同志社大学文学部美術芸術学専攻卒業後、京都工業試験場 陶磁器研修本科、専科修了。
その後、京都西山窯にて4年間修行。タイ サイアムセラドン社にて一年間技術指導後、 長野県東御市勘六山房(故水上勉氏主宰)にて、同地の土を陶土として作陶している。
出会ってから12年が経った。
長野県東御市の角さんの工房
角さんの工房にはたくさんのねこちゃんとわんこがいる。
時々目が合うと嬉しくなる。
角さんとわたしが出会ったのはある陶器市だった。作品に一目惚れして購入したしばらく後に、まだ開業前だったのにも関わらず、お店をオープンしたら置かせてほしいということをお願いしたのだった。あれから12年という時が経ち、変わらぬ関係性が続いていることに本当に嬉しく思う。
美しいものを作るために必要なこと
焼きあがったばかりのシンプルなカップ
角さんは大学で美術芸術学専攻をする中で一つの疑問が湧いたという。ものを作る人になるために何をするべきかと。芸術についての哲学に詳しくなるよりも、陶芸家に弟子入りして奉公するよりも、手を絶えず動かす職人の方がもしかしたら美しいものを作るのではないかと。それを確かめるかのように、京都工業試験場に入学し、その後、窯元で4年間修行をする。
角さんが生きてきた人生の中での若い時の一つのエピソードではあるけれども、話すたびにこの経歴が角さんの陶芸家としての形成に、深く影響を及ぼしているだろうなと感じることがある。京都の薄作りの器を修行時代に繰り返し作っていることが現在の精度にも繋がり、美しいラインを生み出しているのかもしれないし、角さんと話すと柔らかな哲学を感じるのは、美術を大学で学んでいるという基礎にも通じるのかもしれない。
いつも笑顔の角さん。
ここの人じゃないのにここの土で焼く。
作品の最大の特徴は山の土を自分で採取して粘土を作ることかもしれない。
裏山の土と、信楽の土を合わせて自分で粘土を作る。
鉄分の多い粘土は様々な意匠となって器に宿る。
角さんが長野県東御市で作陶する経緯はちょっと変わっている。作家の故水上勉さんとの偶然の出会いだった。「がんばってやっていると必ず道が開けるものよね」と角さんはその偶然を語ってくれた。そして、陶芸に兼ねてから取り組みたかった水上さんのサポートをするために引っ越してきたのだ。裏山の粘土で作陶するという話にも強烈な魅力を感じたと言う。それからもう25年以上、水上さんが亡くなられてからもこの土地の粘土を掘って作陶をしている。まさかこんな風になるとは思ってもみなかったと角さんは笑った。
工房には水上さんのポスターが貼られていた。
鉄分が多く含まれた粘土により、ポツポツとした独特な肌触りとなる。
あくなき探究心
ずっと以前に見せてもらった釉薬のテストピース
角さんは粘土作りだけでなく、釉薬の調合にいつも挑戦している。買った釉薬に様々な材料を混ぜたり、一から自分で作ったり。出したい色を出すために、何度も何度も調合テストを繰り返して、テストピースを作るのだ。10年ほど前に見せてもらったのは、色とりどりのカラーのテストピースが主だった。
今は色んなニュアンスの白
今は白ばかりをテストしているという。色んな白を出したいと。どうしてですか?と聞くと、「鎮魂かな。」と。白は難しい。白には様々な白がある。青みがかった、黄みがかった、乳白色、真っ白、卵のような、白と一口に言っても、思い出す白は人それぞれの白だから、白は難しい。
このきめ細やかさが角さんだなと思う。
白の企画展をやりましょう!と盛り上がる。やります。
帰るのが名残惜しい
わたし達の為に外に出されてしまったわんこの切ない表情よ。笑
取材だと言って訪れたのに、脱線しまくり2時間があっという間に経過。いつも話題が美術から音楽から幾多にわかれて飛び火して全然話が収まらない。何を話したというよりも、角さんと会えたという印象がわたしの心を暖かくして、帰るのだ。また遊びに来ますね、角さん。
角さんの作品は毎回入荷量が少なく一期一会です。再入荷の可能性も極めて低いです。実店舗には掲載されていない作品も少量入荷することもあります。ぜひお店にいらしてくださいね。お待ちしております。
- 執筆:わざわざ編集部
- 撮影:若菜紘之
- 最終更新日:2021.03.09