えのきだ窯(陶芸)
益子の土を使い、益子の釉薬を使い、窯で焼く。
栃木の北部に位置するのどかな田園風景が広がる小さなまち、栃木県益子町(ましこまち)。この地では良質な陶土が採れることから昔から陶芸のまちとして知られています。春と秋には大規模な「陶芸市」がひらかれ、全国からたくさんの陶芸ファンが益子を訪れます。
素朴であたたかみのある風合いが特徴の益子焼。益子の土は鉄分を多く含んでいることから重厚感のある仕上がりになります。そこに柿釉(かきゆう)や飴釉(あめゆう)といった釉薬をかけることにより、やさしい色合いと深みのあるうつわが生まれます。
昭和の初めに広がりをみせた民藝運動の中心的人物となった陶芸家・濱田庄司さんが益子に窯を構えたことで「用の美」を大切にする器として益子焼の名前が広まりました。いまでもその精神を受け継ぐ作り手たちが益子に集まり、それぞれのうつわを生み出しています。
そんな益子町で昭和から続く老舗の窯元、この土地の土と釉薬にこだわり作陶に取り組む窯元「えのきだ窯」があります。手がけるのは茶器に茶碗や大皿に花器など、毎日の暮らしに欠かせないうつわたち。ろくろや手びねりに、たたら成形などと作品にあわせて様々な技法を使い分けながら作陶されています。
その中でも特に力を入れているのが急須。急須づくりの名人として知られている四代目の榎田勝彦さんは、その功績が認められ、昭和天皇より「七勲等青色桐葉章」を受章されています。いまでは五代目の若葉さん・智さんご夫婦がその背中を追い、急須づくりに取り組まれています。
- 執筆:わざわざ編集部
- 撮影:若菜紘之
- 最終更新日:2025.07.24