またいちの塩
糸島の山と海の恵み
自然と向き合う塩づくり「またいちの塩」
新三郎商店 またいちの塩の製塩所「工房とったん」。塩のほか、ゆで卵やドリンク、プリンの販売もあり、多くの人で賑わいます。
福岡県糸島市。玄界灘の内海と外海がちょうどぶつかり合い、山と海の豊富なミネラルが混ざり合うこの土地で、新三郎商店は伝統製法による塩づくりを続けています。
新三郎商店を代表する「またいちの塩」は、完成まで1ヶ月以上かかることもあるといいます。塩づくりに使う海水を汲み上げ、竹の塩田を使って濃縮する工程、海水を平釜で炊き結晶化させる工程に至るまで、すべてが手作業で行われているのです。
新三郎商店 代表の平川秀一さん。
美味しく、そして身体に優しいものを作るためには、手間と時間を惜しまないこと。海水を炊く工程でも、天候や気温にあわせて職人が釜の火加減を調整するなど、自然とじっくり向き合う塩づくりを大切にされています。
新三郎商店では製塩所のほか、器や調味料を置くお店、旬の食材を使った料理店など、複数店舗を糸島市内で運営しています。
またいちの塩の作り方
またいちの塩づくりは、竹を組んだ立体式の塩田で、汲み上げた海水を約10日間循環させる事から始まります。太陽と風の力で、より塩分濃度の高い海水(かん水)に変化していきます。
塩の原料となるのは、山と海のミネラルが豊富な海水のみ。これは糸島の突端に位置するからこそ手に入る海の恵みだそうです。
製塩所「工房とったん」にある立体塩田。ここに汲み上げられた海水は、太陽と風の恩恵を受けながら徐々に濃度を上げていきます。
竹をつたって落ち続ける海水。風が強すぎたり温度が高すぎたり、雨天ではどうすることもできず、梅雨時にはこの工程だけで約1ヶ月を要することもあるそう。それでもじっくりと待ち続けます。
次に、濃度を高めた海水(かん水)を釜に移します。大きい釜で2日、小さい釜で1日煮詰めていくと、やがてかん水が飴色になり、塩の結晶が出来てきます。
釜の火加減は、「強すぎても弱すぎても塩の味は変わってしまう」といいます。天候と釜のかん水をじっくり観察しながら、職人が火加減を調整していきます。
薪を焚き、海水を煮つめ、一番美味しくなる温度を保ちながら塩の結晶をすくっていきます。すくった塩は杉の樽で一晩寝かせることで、水分(にがり)を抜いていきます。
乾燥させ、ふるって粒の大きさを揃えたら、職人たちが手作業でひとつひとつゴミを取り除きます。古くから伝わるこの製法で、最後まで職人の手で作ることによって、またいちの塩の美味しさが作られています。
脱プラスチックへの挑戦
青いパッケージが炊塩。赤が焼塩。
新三郎商店では、またいちの塩のパッケージに紙製のアイスカップを使用しています。
「海水を原料に塩づくりをするからこそ、海洋汚染をはじめ、環境へ影響を及ぼす原因となるプラスチックを使い続けるわけにはいかない」との考えから、2021年11月、またいちの塩のパッケージをリニューアル。当時使用していたプラスチックの包装から変更し、自然に還る素材を使うチャレンジを続けています。
- 執筆:わざわざ編集部
- 撮影:若菜紘之
- 最終更新日:2022.08.11