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人との「距離感」について、どう向き合っていますか?

人との「距離感」について、どう向き合っていますか?

長野と東京(岡山)。48歳と32歳。住む場所も年齢も全然違う、距離のあるふたり。

わざわざ代表の平田はる香と、よきマガジン編集長のあかしゆか。仕事を通じて知り合ったふたりですが、距離があるからこそ話せることがあったり、聞いていて新しい発見があると言います。健康、仕事、家族、人間関係──。よき人生を模索して、ふたりがゆるり気分の赴くまま綴る、「距離のある交換日記」がはじまります。

  • 執筆:あかしゆか
  • イラスト:ナガノチサト

あかし→平田さんへ

平田さん、こんにちは。「距離のある交換日記」、ついにはじまりましたね。これから平田さんとこの場所でいろいろなお話ができることをとても楽しみにしています。今私は岡山にいて、自分が営む本屋の開店前の時間にこの文章を書いています。

さて、初回の今日は、この交換日記のタイトルにもある「距離」というテーマで平田さんとお話してみたいなと思っています。

というのも、「他者との距離感」というものは、私がこれまで生きてきた人生の中での大きな問題のひとつでもあるのです。仕事との距離、家族との距離、友人との距離、恋人との距離。近すぎても遠すぎても難しく、なおかつそれは自分だけでは選べずに相手との対話や意思疎通が欠かせない。好きになればなるほど近づきたいと思うけれど、近づきすぎることがお互いにとっていいことだとは限らない。

たとえば昔、文章を仕事にしはじめたばかりの頃、私は書くことが仕事になっているという事実がうれしくて、いただいた仕事を無理してでもすべて受けていた時期がありました。期待に応えないと、文章が自分の手元から遠ざかってしまうかもしれない。そんな恐怖心からがむしゃらに仕事をしていくうちに、好きだったはずの文章がどんどん自分の生活や心を圧迫するものになっていきました。結果的に文章を手元から遠ざけてしまったのは、他ならぬ自分だったのです。

恋人との距離感もそうです。恋愛がはじまったばかりの頃はうまく距離を保てていても、一緒に住んだりして仲が深まるうちに、必要以上に相手のことを知ってしまい、知ってしまったが故に尊重する気持ちが薄れていってしまったりする。

逆も然りで、自分は少しずつ距離を近づけたいと思っていたのに相手から求められすぎて、それが重くなって逃げてしまったこともたくさんあります。

いろんな失敗を経て、私の中で人と人が適切な距離を保って共に生きていくために必要なことは、「速度」と「期待」をそれぞれがコントロールしていくことなのではないか、という気がしています。この人と仲良くなりたい、この仕事を大切にしたい、相手のことを知りたいと思った時に、その速度が速すぎても遅すぎてもうまくいかないし、期待が大きすぎても小さすぎてもうまくいかない。速さや遅さ、大きさや小ささ自体が問題というよりも、それが相手と噛み合わないことが問題だと思うのです。

だからこそ、自分と相手が心地よい速度と期待を見つけ、対話し、それを保っていく努力を続けていくことが大事なのではないかと考えるようになりました。

空腹でばくばくと貪るように食べるごはんもおいしいけれど、ゆっくりと噛み締めるように食べるごはんだっておいしい。何をどのように食べるかは、人によって違います。相手と一緒に食卓を囲むような気持ちで、その食卓の空間を共につくっていくという姿勢のようなものが必要なのではないかと思うのです。

大人になるにつれて、少しずつそれぞれの距離を大切にできるようになってきたとは思うものの、まだまだやはり難しいなあと思う瞬間もたくさんあります。

平田さんは、人との距離を考える時に大切にしていることはありますか? 平田さんもたくさんの方と関わられると思うので、どうやって考えられているかすごく気になります。

お返事楽しみにお待ちしています!

あかし


平田→あかしさんへ

あかしさん、こんにちは! 遂に交換日記が始まりましたね。誰かから手紙をもらうことなど、現代、ほとんどない経験になっている中で始まった連載。あかしさんとお手紙でお話しできるのがとても嬉しく感じます。どうぞよろしくお願いいたします。

さて、距離感。初回からなかなかに深い話題且つ、私の苦手分野ですね。距離感って難しいですよね。参考になるかわからないですが、考えて書いてみますね。

あかしさんの書いている

私の中で人と人が適切な距離を保って共に生きていくために必要なことは、「速度」と「期待」をそれぞれがコントロールしていくことなのではないか、という気がしています。

は、すごい分析ですね。確かにこの2つがお互いにとって気持ちがよい場所をついていると、居心地のよい関係性になりそうです。LINEのメッセージのタイミングや頻度がちょうどいい人とはやり取りがしやすいですし、ビジネスでもメールやメッセージの頻度がずれている人とはやりづらく感じます。自分の期待通りの速さでレスポンスされるか否か?は、結構真理な気がします。

だけど、お互いがどの辺がちょうどよいかは、しばらく付き合わないとわからない。そのしばらくをお互い譲歩しながら調整していって、具合のいい場所を見つけられた時にやっと居心地のよい関係性になるのかなと感じました。

会って話す時もそうですね。初対面で自分のことばかりを話す人とはあまり仲良くはなれないですね。発言の総量や聞いている時間がイーブンであれば、関係性をこれから育もうかなと感じられると思います。

そうやってちょうどよいが図られた後には、この日は相手が辛そうだからとことん寄り添って話を聞こうとか、配慮をしながら段々と気のおけない友人になっていくのだと感じました。

だとすると、労力を払ってまで居心地のよい関係性を作ろうとするか否か?を判断するのは、最初の印象かもしれません。確かに、そうです。ほぼ初対面でこの先付き合うべきかどうかは判断している気がします。

私の場合、人間に対してのキャパが限りなく小さいです。ビジネスを通して人間関係を構築しているのが殆どですし、休日に家族以外の人と会うこともほぼありません。なので一緒に仕事したい人であるか?が一番最初の基準ですね。

誠実であるか?
正直であるか?
言葉がきれいか?
相手を思いやった行動か?

媚びてくる、忖度してくる人が好きではないので、まず除外。笑。あとは何らかのインセンティブを求めてくる人も除外。熱い志がある人は好きですが、成長欲求の低い人もあまり興味が湧きません。あと暗い人はいや。明るくて元気な人がいい。あと、食べるのが好きなので一緒においしいものをおいしいと食べてくれる人が好ましい(普段は食に興味がなくても、おいしいねと付き合ってくれたらそれでいい)。

やかましいですかね?笑

いやー、最近思うんですよ。もう少しで49歳なんです、私。そんなに時間もないですしやれることも限られています。そんな中で関わる人に関してはこれまで以上に厳しく精査したいと思っています。人間関係は生きていくにあたって必要であるとは思いますが、最小限でいい。たくさんの人に好かれる人にならなくていいです。

私は私の愛す人たちに愛されていればそれでいいんです。それが一人であっても二人であっても十分です。何ならなくても大丈夫と言いたいです。その時は自分が人一倍自分を愛したいです。

だから距離感を保つどころかどんどん切ってシンプルな構成にしたいですね笑。結局、距離感をちょうどよくがめんどくさいので、付き合うか付き合わないか初見で判断して、人間関係をスリム化するという回答になりました。人外な回答でごめんなさい….(この連載怖いですね、人間性が露呈します笑)

あと、最近、人間のコスパについてよく考えます。生きていてコスパの高い人間性は「笑顔で元気な人」だという結論に達しています。不機嫌であることで得なことって一つもないんだなと最近思うんです。周りに対して笑顔で居られる人は、人に余計な気を遣わせることもなく、調整する必要性もない。元気で笑顔な人のコスパの高さといったら。です。

だからそういうご機嫌な人になりたいって思って努力しています。平田さんといると楽しいな、なんかいい人だったなと感じてもらえるのが一番いい。だけどみんなは無理なので切るところとは切って、そんな人にはボロくそ言われるんだとは思うんですが、そんな人はわたしにとって超コスパ悪い人なんで、お付き合いする必要なし、です。

あかしさんはコスパの高いこと、最近ありましたか? おいしいご飯でもいいです笑。またお手紙で色々と教えてください!

ひらた

あかしゆか

1992年生まれ、京都出身。大学時代に本屋で働いた経験から、文章に関わる仕事がしたいと編集者を目指すように。 現在はウェブ・紙問わず、フリーランスの編集者・ライターとして活動をしている。2020年から東京と岡山の2拠点生活をはじめ、2021年4月、瀬戸内海にて本屋「aru」をオープン。

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