
プロフィ─ル:
永井淳平(ながい・じゅんぺい)
1980年生まれ、長野在住。パ─ソナルトレーニングジム「FUTURE.FITNESS」代表。パ─ソナルトレ─ナ─として活躍する他、コンテスト選手としての受賞歴も持つ。
3ヶ月続けられたら継続できる
──永井さんのパーソナルトレーニングジム「FUTURE.FITNESS」には、わざわざ代表の平田さんが通っていると聞きました。今日はぜひ、筋肉をつけることや体を鍛えることについてお話を聞きたいと思います。まず、永井さんがトレーニングジムを始めることになったきっかけについて教えていただけますか?
実は、以前はトレーニングとは全然関係のない仕事をしていたんです。奥さんの仕事を手伝ったり、コンビニの経営に携わっていたり。若い頃はずっとサーフィンをやっていてよく体を動かしていたのですが、30代になり仕事が忙しくなってから、全然運動をしなくなったんです。そうしたら体型が変わってしまって、「これはどうにかせねば!」とトレーニングを始めたのが始まりでした。
とはいえ、僕が住んでいる佐久市には当時ジムが一軒もなくて、市営の体育館が一つあるくらいだったんです。そこでまずは独学でトレーニングを始めたのですが、だんだん仲間が増えていって、コミュニティができていきました。それで2018年、佐久市にパーソナルトレーニングのジムをオープン。2023年に御代田に移転し、今に至ります。
──始まりは運動不足だったとは意外でした。平田さんは今、週1で通っているそうですね。
そうなんです。1年半ほど前から来ていただいています。平田さんの行きつけのネイルサロンの方が、うちのジムに3年ほど通ってくださっているんですけど、「トレーニング、めちゃくちゃ辛い」と言いながらも毎週通っているのを見て、「そんなに辛いのになんで通っているんだろう?」と不思議に思ったそうです。それで体験に来られたのが始まりでしたね。
──初めてトレーニングを体験した時は、階段を降りられないくらい脚が震えていたと言っていました(笑)。だけど紹介してくださった方が美しいスタイルをキープされているのを見て、これだけキツイんだから効果があるはずと思い入会したと。平田さん自身、体脂肪率が落ちたり肩こり・腰痛がなくなったりと、確実に身体が変わっていると実感しているそうです。確かに周りから見ていても前よりずっと元気になったと感じます。
トレーニングを続ける秘訣は、そういうポジティブな変化を感じることですね。スタートして最初の3ヶ月間は、身体的にもメンタル的にも相当キツいと思うんです。「私、何やってんだろう?」とか「もう無理かも」と思ってしまうと続けられない。頑張りすぎると潰れてしまうので、うちのジムではまずは楽しんでいただくことを大事にしています。楽しくおしゃべりしながらトレーニングをする感じですね。
それで3ヶ月続けられると、まさに平田さんがおっしゃっていたような変化が感じられるようになって、トレーニングに対してポジティブになってくるはず。そこまで行くと、もう継続できると思います。

──まずは3ヶ月が目安なんですね。それまではとにかく、頑張りすぎない。
その通りです。僕がトレーニングで一番大事にしているのは、実は体よりもメンタルなんですよ。僕は心理学の勉強もしているのですが、それはなぜかと言うと、「体型を変えたい」という気持ちの根っこが人それぞれ違うからなんです。まずは今の体型を変えたいと思うメンタル面での原因をはっきりさせないと、なかなか体を変えることはできないんです。
例えば、1年で10キロくらい体重が増えた人がいるとしましょう。単純に食べすぎた、運動をしなかったからと考えがちですが、生活習慣だけではなく、人間関係や環境の変化、昔の家族関係の影響、ストレスなど、心理的なことが原因であることも多いんです。なのでうちのジムでは、まずは「なぜ太ったのか」「なぜ痩せたいのか」の原因を、ヒアリングを通して探っています。メンタルが変わらないと、体は変えていけないんですよね。
筋トレは自分と向き合う時間
──FUTURE.FITNESSさんは、「年齢に抵抗するのではなくより良く歳を重ねる」というスローガンを掲げていらっしゃいますね。若い方だけではなく、ご年配の方もよくいらっしゃるのでしょうか?
はい。うちのジムには、「体型を変えたい」という思いで来られる50〜60代の方が多くいらっしゃいます。年齢を重ねてくると、どうしても体型が変わってくるものなんです。でもそれはご本人のせいではなく、ホルモンバランスの変化が大きな要因なんですよね。そこで無理に食生活を変えてしまうと、げっそりとやつれてしまったり、活力が無くなったりしてしまう。そうではなく、年齢を重ねるごとに魅力も重ねていけるようになってほしい。そのためにはただ「痩せる」よりも「筋肉を使う」ことの方が効果的です。
──年齢を重ねてからも、筋肉はつくんでしょうか?
もちろん。80歳を過ぎても筋肉はつきます。うちの会員様の中にはご高齢の方も多くいらっしゃいますが、皆さん本当にパワフルなんです。ジム以外にもゴルフやテニスに出かけたり、「トレーニングに通うようになってから、ゴルフの飛距離が伸びた」と喜んでいらしたり。いくつになっても成長できるんだと実感できると、メンタルも前向きになって、どんどん明るくなっていく。筋トレをすると体が健康になるという良いこともありますが、このメンタルのポジティブな変化が一番の効果だと思います。僕自身、それを実感しているんですよ。もともと諦めやすいタイプだったのですが、筋トレをすることで根気強くなれたので。

──実は私も2年前から筋トレを始めたのですが、それはとても共感します。体力がついたのもあってか、ストレスに強くなったなと。あとは「筋トレを続けている自分すごい!」と、自信を持てるようになりました。自分との約束を守り続けているというか。
それもありますよね。僕にとってトレーニングは「自分と向き合う時間」でもあるんです。トレーニングの時間を通して、自分のチューニングをしている気がするんですよ。そういう時間って、現代ではなかなか取れないですよね。仕事中はずっとパソコンを見て、寝る直前までスマホを見て……。だけどトレーニング中はスマホを触らないし、自分の心身としっかり向き合える。それが、僕がトレーニングを続ける大きな理由ですかね。
──確かに、今日はいつもより楽にできるなとか、今日はすごくしんどく感じるなとか、自分の心身に敏感になりますよね。トレーニングを自分と対話する時間と捉えると、新しい見方ができそうです。
口に入れる前に一度考えてみる
──いい筋肉をつけるために、日常生活の中でできることはありますか?
一番大切なのは、やっぱり食事です。食べない体づくりではなく、良質なものを食べてしっかり体を作ること。カロリーを減らしすぎたり、糖質をまったく摂らなかったりすると、脂肪よりも前に筋肉が落ちていくんです。筋肉が落ちると代謝も落ちて、太りやすくなる。悪い循環に入っていってしまうんですね。
だからと言って、「タンパク質を取るために鶏ムネ肉ばかり食べなさい」ってことでもないんです。好きなものを食べることは心の栄養にもなるし、そこは我慢しすぎないでほしい。ただ、食べたいものの中で「これを食べるより、こっちを食べた方がいいかな」という方を選んでいただきたいですね。例えばラーメンよりもお米を食べた方が体にいい。白米を食べるよりも玄米の方がいい……そんなふうに「より良いものを食べる」発想を身につけてほしいと思います。
──なるほど。ちなみに私は甘いものが好きなのですが、どんな風に考えると良さそうでしょうか?
甘いものの場合は、洋菓子よりも和菓子を選ぶといいですね。洋菓子は糖質に加えて脂質も多いのですが、和菓子なら脂質が少ないんです。脂質と糖質を一緒に摂ると体にダメージを与えるので、どちらかを摂りたいなら、どちらかは控えるといいと思います。
──ちなみにお酒も好きなのですが……。
お酒は飲んでもいいことないですよ(笑)。少しの量なら体にいいという言説もありましたが、今はもうそれは否定されています。アルコールを摂ることにより筋肉が壊れるので、特にトレーニングのあとはおすすめしません。せっかく頑張っても効果が薄まってしまうのでもったいないんですよね。また、睡眠の質も落ちてしまいます。お酒を飲んだらよく眠れるという方がいらっしゃいますが、それは睡眠というよりも気絶に近い。とは言え、我慢しすぎるのもよくないので、心の栄養のためにたまに飲むのはいいのではないでしょうか。
──それを聞いて少しほっとしました(笑)。「これが食べたい、飲みたい」という欲は打ち消さなくてもいいから、「もっとより良くするには何を選べばいいかな?」と考える癖をつけるとよさそうですね。
まさにそうですね。口の中に入れる前に、一度考えてみる。それが習慣づいてくると、気にしなくても体作りのために良いものを選べるようになります。僕はもう、全然気にしてません。食べたいものを食べているけれど、我慢している感覚もありませんね。
このように、食事を始めとした日常生活全般を整えることが大事だと思います。睡眠をしっかり取って早起きする、お風呂では湯船に浸かって血流を良くする……そういう当たり前なことを地道にやって習慣になれば、自然と心が整って、体も思考も変化すると思います。
いくつになっても美しさは内面から
──お話をうかがいながら、やはり「頑張りすぎない」ことが大事なのだなと思いました。運動も食事も「頑張ろう!」と思いすぎるとハードルが上がってしまって、始めることすらできなくなりますよね。「まずは3か月」を目安に、気軽に始めてみるのが良さそうですね。
そうですね。始めるのは早ければ早い方がいいと思います。「マッスルメモリー」と言って、筋肉は貯金できるんですよ。例えば筋トレを一年くらいお休みしても、再開すればすぐ身についていた筋肉が蘇るんです。一度ついた筋肉は、なかったことにならないんですよね。その貯金は早ければ早いほど増やしていけるので、ぜひすぐにでも始めてほしいなと思います。
──ありがとうございます。最後に、永井さんが考える「美しさ」について教えてください。
僕は美しさって、外見だけではなく内面も重要だと思うんです。ポジティブな発想を持っている方は、いつもイキイキとして素敵ですよね。内面が変わると、外見も変わる。トレーニングを通してメンタルが前向きになれば、いくつになってもより美しくなれると思います。
美しい筋肉をつけるために、今日からできること
最後に永井さんに「美しい筋肉をつけるために、今日からできること」を伺ってみました。
「パーソナルジムに行くにはまだ勇気が出ないという方は、トレーニングより先に日常生活の習慣を変えることをおすすめします。食事や睡眠などの日常生活が整えば、自然と体を動かそうという発想になってくると思いますよ。
まずは、早寝早起きがおすすめですね。理想の睡眠時間は7時間なので、起きたい時間から逆算して眠りにつくようにするといいです。6時に起きたいのであれば、23時に眠ればいい。僕は毎朝6時に起きて、寝起きのまますぐウォーキングに出かけています。最低で40分、休みの日には1時間ぐらい。もう習慣になっていて、10年以上体調悪い日以外はずっと続けています。
もはや、やらなくちゃいけないという感覚ではなく、やりたいんです。外に出て朝日を浴びたいとか、音楽を聴きながら散歩したいとか。きっと朝早く起きると、「何かしたいな」という気になりますよ。生活習慣を整えると、メンタルがまず変わってくるはず。そこで20分でもいいから、歩いてみるといいと思います」