
プロフィール:
滝澤梢(たきざわ・こずえ)
長野県御代田にある、“忙しくてもちゃんと綺麗でいたい人のトータルサロン”「Kira eyelash&nail御代田店」のオーナー。ネイリスト歴は27年。日本ネイリスト協会本部認定講師として、ネイルスクールも開校している。「ここに来れば『変わりたい』が叶うサロン」を目指し、アイラッシュ、アイブロウ、脱毛、インクメイクも取り扱う。
コンプレックスがチャームポイントに
ー滝澤さんはネイリスト歴27年とのことですが、ネイルを始められたきっかけはなんだったんでしょう?
小学生の頃から、ずっと自分の爪がコンプレックスだったんです。爪の形がどうしても気に入らなくて、「どうしたらきれいな形になるんだろう」と考えていました。洗濯バサミで爪の先をつまんで、ほっそりとした形にできないか試行錯誤したこともありましたね。そんなある日、スーパーでネイルケアキットを見つけて、母に頼んで買ってもらったんです。それを使って、毎日のようにピカピカに磨いていました。すると、高校生になった時久しぶりに会った友達に「爪、すごくきれいだね」と褒められたんです。それがすごく嬉しかったのを覚えています。
セルフネイルも大好きだったのですが、初めてネイルサロンに行ったのは二十歳の時。当時はお金がなかったので、1本だけバラのネイルアートをしてもらいました。家に帰ってからその施術の真似をして、他の爪にも自分でネイルアートしてみたり。それくらいネイルが好きでしたね。
ーそんなに幼い頃から、爪にこだわりがあったんですね。当時のコンプレックスが今のお仕事につながっているとは驚きました。
子どもの頃のコンプレックスって大きいものだなと思います。端折らずどうにかしたいと手入れを続けていたら、いつの間にか自慢したいくらい爪がきれいになっていて、コンプレックスだった爪が一番のチャームポイントになっていました。それで、ネイリストを目指すようになったんです。
その後、ネイリストのスクールに通いながら、トータルビューティサロンの裏方としても働き始めたのですが、お客様の表情がみるみる明るくなったり、喜んでくださっている姿を見て感動しました。本当に皆さん、とっても幸せそうで目がキラキラしているんですよ。その気持ちは自分にもよくわかるし、「美容の力ってすごいな、自分もそんな瞬間に携わりたいな」と思い、それからはネイルだけではなく、まつげパーマや脱毛などのスキルも身につけました。今でも、お客様が変わる瞬間に立ち会えるのが何よりの喜びですね。
ネイルをするとどんな変化が起こる?
ー中でもネイルケアは、美容の中でどんな役割を持っていると思われますか?
シンプルに、自分のモチベーションを上げてくれるものだと思います。手や爪って、顔や髪型よりも頻繁に目に入るものだから、それがきれいだと嬉しくなりますよね。ネイルが終わると、お客様の気持ちが上がっているのをダイレクトに感じます。
ー本当にそうですよね。私も4年程前からジェルネイルを始めたんですけど、きっかけは友人の爪を見た時だったんです。かわいい色で塗られているのを見て、単純に「いいなぁ」と思って。初めて塗った時、すごくテンションが上がりました。
そうそう。人の爪も結構見ちゃいますよね。逆に自分の爪がきれいだと、人に会って見せたくなったり。うちのサロンでも、隣の席のお客様が私に「見て見て!」と仕上がりを見せてくださることがあります(笑)。そんな喜びは、年齢関係ないですね。うちは私より年上のお客様が多いのですが、皆さん少女のように喜ばれます。
ーわかる気がします。爪がきれいなだけでこんなに嬉しくなるものなんだと驚きました。
あとネイルっていうとキラキラしていたりカラーを乗せたりと華やかにするイメージがありますが、実はそれだけではなく、爪の補強にもなるんです。
例えば、平田さんもボルダリングをされていますが、うちにはスポーツをされている方がよくいらっしゃいます。ネイルをしていると、爪が欠けたり折れくくなるんですよ。また、以前ご病気で爪が弱くなった方がいらっしゃったのですが、ネイルをすることで手先のストレスが減り生活しやすくなったと、とても喜ばれていました。丈夫な爪に生え変わるまでの保護にもなりますしね。
そんな風に、ネイルは見た目だけではなく、機能面や精神面でのケアの意味合いもあるように思います。
ーなるほど。爪で悩んでいらっしゃる方は、一度ネイルサロンで相談してみるのもいいかもしれないですね。
そうですね。透明なジェルネイルをされる方もいらっしゃるし、華やかにするだけがネイルじゃないということもぜひ知っていただきたいです。
ネイルカラーの選び方
ー私が初めてネイルサロンに行った時、色選びで悩んです。自分には何色が似合うんだろうとか、今後の予定のTPOに合うだろうかとか、いろいろ考えちゃってなかなか決まらず……。滝澤さんの施術では、どんな風に色を選んでいらっしゃいますか?
お客様が「こんな色にしたい」というイメージを持ってきてくださるパターンが一番多いですね。だけど私の場合はそれをそのまま塗るのではなく、お客様の生活や環境、お肌の色や爪の形に合わせながらご提案するようにしています。「いつもよりかなり派手になるけど大丈夫ですか?」とか、「このままだと少し色が浮くので、もう少し抑えた色にしましょうか」とか。
ネイルって一度つけると1ヶ月近く外せないので、「ストレスにならない」ことはとても大事だと思います。私はカーキ色が好きなんですけど、あんまりそのネイルカラーが似合わなくて……いつも塗った翌日には取りたくなっちゃうんです(笑)。
ー好きな色と似合う色って違うんですね。
そうなんですよ。なので、やっぱり実際に肌と色を合わせてもらうのがいいと思います。それで生活をイメージしていただいて、1ヶ月ご機謙で過ごせるか考えていただくと、後悔がないと思いますね。
一方でネイルのおもしろさは、思い切ってイメチェンできることでもあります。髪型やファッションは一度変えるとなかなか戻せないけれど、ネイルだとすぐ変えられるから。普段選ばない色を選んだり、長さや形を変えてみたり。気になるイメージがあったら、ネイリストさんに相談してみるのがいいと思いますね。
ー確かに、季節や気分によって変えられるのがいいですよね。その時々で自分の気分を確かめる機会にもなりそうです。
「うつくしさ」とは、自分を受け入れ大切にすること
ーそういう意味でも、ネイルケアは自分を大切にする行為だなと思います。滝澤さんは「自分を大切にする」とはどういうことだと思われますか?
難しいですけど、やっぱり自分を好きになることだと多います。私は昔よく「なんで自分はこんな性格なんだろう」と悩んでいたんです。心配性で落ち込みやすくて、情緒不安定で、そんな自分がずっと嫌いでした。
でもある時、「絶対自分を好きになろう」って決めたんです。自分を大切にできないと、人を大切にすることもできないと思ったから。その方法の一つが、私にとってはネイルでした。小学生の頃の私は、自分を好きになりたくて爪のケアをしていた。たとえ友達とうまくいかなくても、嫌なことがあっても、爪の手入れをしている間だけはご機嫌だったんです。こんなにささやかなことでも人は幸せになれるんだと、その経験を通して実感しました。美容にはそういう力があると思います。
ネイルをきっかけに、指先の仕草や振る舞いにも気をつけるようになったり、他の美容にも興味を持つようになったり……そんな風に、自分を大切にする範囲が広がっていくこともあります。無理に贅沢しなくても、華やかなことをしなくてもいい。普段の生活の中で、気持ちがよくなることをすればいいと思います。
ーなるほど。美容って、自分を好きになる方法の一つでもあるんですね。
美容以外にも、そういうことっていろいろあると思うんですよ。好きな音楽を聴いたり、好きなドラマを観たり、朝ゆっくりコーヒーを飲んだり……一見なんてことない小さなことでも、実は自分は自分を癒そうとしている。その幸せをきちんと感じ取ることがとても大事なんじゃないかなと思いますね。
ーそうですね。大きな幸せを手に入れることは難しくても、小さな幸せを作ることは今すぐにでもできます。好きな香水をつけたり、好きな人に会ったり。その繰り返しの先に、「好きな自分になる」があるのかもしれません。
私は「うつくしい」って、無理をせずに自分らしくいられる状態のことだと思うんです。自分をきれいに見せようと頑張り過ぎたり、誰かに合わせたりするのではない、自然体のままでいられる人ってすごく魅力的。ちゃんと自分を受け入れて大切にすることが「うつくしい」ってことなんじゃないかなと思いますね。
ーお話を伺いながら、自分は自分を大切にしていたのかも、と思いました。もっと何かしないといけないと思っていましたが、実はすでに行っていたんだなと。
それにまずは気づくことからだと思います。普段からきっと、自分を大切にしているはず。すでにある小さな幸せを見つけられたら、それが自分を好きになること、自分らしい「うつくしさ」につながるのではないでしょうか。
爪を美しくするために、今日からできること
最後に、滝澤さんに「爪を美しくするために、今日からできること」を伺ってみました。
「すぐにでも取り組めるのは、手を洗った後、しっかり水分を拭き取ることです。爪の周りの溝の部分って水が溜まりやすいんですけど、それが蒸発する時、一緒にお肌の水分まで持っていかれて乾燥してしまうんですよ。手先の乾燥は、それが原因の一つなんです。なので、まずはタオルやハンカチでしっかり水分を拭き取ること。その後ネイルオイルやハンドクリームを塗れば、より一層効果が出ると思います。
後は本当に小さなことですが、爪のわきのささくれを引っ張って取らないこと。小さなニッパーなどでちゃんと切ってあげるだけでも、治りが違うはずですよ。
ほかには、爪を爪切りでパチパチカットするより、爪ヤスリで一定方向に削っていくこともおすすめです。爪に負担がかからず二枚爪防止にもなります。その際、1ミリほど白い部分を残すと爪先の荒れも防げます」
教えてくださったのは、本当にすぐにでもできることばかり。だけど、普段の生活ではつい見過ごしてしまいそうなことでもあります。自分を大切にするとは、決して特別なことばかりではなく、実はこういった小さなことの積み重ねなのかもしれません。
まずは、自分がすでに自分を大切にしているんだということに気づくこと。そして、その幸せを感じること。そこから「うつくしさ」が始まるのだと、滝澤さんに教わった時間でした。



