山口和宏(ヤマグチ カズヒロ)
(プロフィール)1956年生まれ、福岡県うきは市在住の木工作家。26歳から家具メーカーに勤務した後、家具職人として独立。1995年からは福岡県吉井町(現在のうきは市吉井町)に工房と住居を構え、カッティングボードなどの製作を開始。木工作家として活動し始める。現在は、娘婿である明田一城さんと2人で木の道具や家具を手掛けている。
出会いはうなぎの寝床で2012年
木工作家・山口和宏さんの作品に初めて出会ったのは、2012年8月、福岡県のうなぎの寝床さんに伺った時でした。長野から車で真夏の九州へ辿り着くと、その暑さは尋常でなく、息も切れ切れだったところに、山口さんの大きなくり抜きのお盆に、冷たい八女茶を煎れて迎えてくださりました。
実際のお盆はこちらの特注サイズでした
「これはどなたのものですか?」と聞くと、うなぎの寝床の白水さん(創業者)が、「山口さんにお願いして特注で作ってもらったものなんですよ。」と教えてくださいました。およそ30cm四方の大きな栗の木のくり抜き盆です。初めて出会った人に特注を頼むのは厚かましいなと思い、よいですねぇと言って終わったのです。
それから、うなぎの寝床さんで山口さんの器を少しずつ購入し愛用していました。
ちょっとずつわざわざを変えていこう
わざわざの初期は、「長野」にこだわったセレクトをしていました。当時の流行りは地産地消。できるだけ近くのものを販売しようと思っていたのですが、段々と「ちょっと違うな」と感じてきたのです。わざわざのある長野県東御市周辺は、東北・関西・九州などとは違い伝統工芸品の大きな産地ではありません。どちらかというと、農業が主体で大きな会社の工場がある生産地でもありました。
何よりも、来客の半分ほどが近隣から通ってくださる地元の方々です。長野のものを十分に知っている方々に新鮮な驚きを提案したい、そんな風に考えるようになりました。そして、県内外のものを幅広くセレクトするようになっていったのです。
そして、2022年、兼ねてから愛用していた山口さんにお声がけさせいただきました。快くお取引を了承していただき、とても嬉しかったです。
山口和宏さんの器
耳納連山と筑後川に挟まれ、果樹園や畑など田園風景が広がるのどかな場所の福岡県うきは市。山口和宏さんは、30年以上こちらで作品を作り続けています。新たに制作に加わった明田一城さんと二人で、日々、様々な材木に向き合い作品を作られています。
高校卒業後、サラリーマンをしていた山口さん。一冊の本に出会ったことがきっかけで、星野民藝という家具メーカーに入社することになります。入社後にどんどんと技術力を上げ、独立し、受注家具を中心に個人で制作をはじめました。
1995年に工房と住居を構えてからは、カッティングボードや木の器などの小物を作り始めるようになり、今に至ります。現在は、娘婿の明田さんと共に制作をする日々です。山口さんの器の特徴は、何と言ってもその温かみでしょうか。あえて彫り跡をのこした仕上げや、木のまるまるとした質感を活かしたその形。
山口さんの穏やかなお人柄をそのまま表したような、器の温もりが印象的です。
工房に伺った際には、山口さん自ら、丁寧にコーヒーを煎れてくださいました。
使い込んだ器が、おいしいケーキの味をさらに引き立てます。山口さんが木工に費やした時間のことをお伺いしながら、幸せな時間となりました。
インスピレーションを受けた器なども見せていただきました。プリミティブな印象を持ちながら、洗練されているそんな山口さんの器のルーツを垣間見た思いです。
彫ってから丸くカットするという工程に驚きました。
初めて手にした時には、少し抵抗があるかもしれませんが、油物も平気です。お菓子やケーキなどで楽しみながら、段々と経年してきたら、パスタや料理を盛り付けてみてほしいのです。
山口家では、カレーも木皿で召し上がるそうです。少し勇気が入りますが、シミも段々と増えれば目立つことなく味になり愛おしくなるのが、木の器の魅力ですね。
うきは市のjingoro
現在、Uターンでうきは市に移住した娘さん家族を中心に、jingoroという店も運営されています。木に向き合いながら、珈琲豆を焙煎したり、パンやお菓子を焼いたりと、ご家族が日々楽しく過ごしている場所です。
木の器とおいしいお菓子とコーヒーを素敵なお店で味わえる、すばらしい場所です。ぜひみなさんも行ってみてくださいね。
jingoro – 木の道具と喫茶のお店
住所:福岡県うきは市吉井町鷹取1557-3
電話: (0943) 73-7773
定休日:水曜日 ~ 土曜日
営業時間:午前11時 ~ 午後5時