
あかし→平田さんへ
平田さん、お返事ありがとうございます! 実に平田さんらしい回答で、ニヤニヤしながら拝読しました(笑)。
>距離感をちょうどよくがめんどくさいので、付き合うか付き合わないか初見で判断して、人間関係をスリム化する
こんな平田さんのようなはっきりした人に、私はとても憧れがあります(どうしても、いろんな人とうまくやろうとしてしまうので…)。でも、年々少しずつ私もそちら側にいっている気はしていて、それはやはり歳を重ねるごとに、自分の残された大切な時間は自分の大切な人のためだけに使いたいという気持ちが芽生えてきているからなのだと思います。
さて、平田さんからの質問にあった「コスパ」という言葉で私が思いついたのは、やっぱり「本」ですね。本が高い、高くなったと言われますが、私は本を作る仕事に携わるようになって、あらためて「本をこの値段で買えるなんてすごいな」と思うようになりました。
数年前、平田さんの著書『山の上のパン屋に人が集まるわけ』を一緒に制作させていただきましたが、この本にはこれまでの平田さんの人生のエッセンスがぎゅっと詰まっています。もちろん本を読んだからと言ってすべてがわかるわけではないですが、平田さんが数十年かけて培われてきた思考に1760円で触れることができるって、今さらながらとってもすごいなと思います。
さらには本が読者の方に届くまでには、著者、編集者、装丁家、印刷会社、製本会社、取次会社や書店まで、さまざまな人びとが関わっていて、もっとさらに言えばこの本は3年以上もの時間をかけて制作されているわけです。丁寧に作られた本はすべて、どれもその背景を考えると安いものだなと思うことがほとんどです。
あとは昨年、父親の還暦祝いに、実家の車屋の写真集を作ったんです。私のきょうだいには今のところ誰も家業を継ぐ人がおらず、このままだと実家が近い将来なくなってしまいます。父親が還暦を迎えると気づいた時に、実家の工場で両親が働く姿を今のうちに残しておきたいと思い立ち、1年かけて制作しました。
作ったのは、家族分だけなので15部ほど。でも、この本づくりにはとことんこだわりたいと思い、制作に自費で60万円ほどをかけました(上製本で、装丁も写真もプロの方にお願いをして、とてもいいものが出来上がりました)。
このことを人に言うと、「高い!」と言われますが、海外旅行に両親を連れていくのだって同じくらい(場所によってはそれ以上)かかったりしますよね。だから、還暦祝いとしてその値段で、未来に残り続ける「本」というものの中に実家の記憶を閉じ込めることができたのは、この上なくコスパがよいことだったのではないかと思っています。さらには、こだわった本づくりをゼロから経験できたことも自分自身の学びになりましたし、両親に自分の仕事を説明する良い機会にもなりましたし、一石二鳥どころか三鳥くらいの気持ちです(笑)。
コスパという言葉は、世の中では値段がやすいものに対して使われがちですが、払ったお金にどれだけ自分の中での「意味」を見つけられるかの方が大事だなという気がしています。平田さんも、前に「お金は血液のようなもの」だとおっしゃっていましたが、まさに綺麗なポンプで良い血をめぐらせるこそが「コスパがよい」ということなんだろうな、そういった「本当のコスパ」を追い求められる大人になりたいな、と思う日々です。
そういえば平田さんは、先日お誕生日でしたよね! おめでとうございます。「歳を重ねるごとに、タイパやコスパを意識するようになった」と前回のお手紙でおっしゃっていましたが、ほかに歳を重ねるなかで、変わっていったことはありますか? 今年の抱負などがあれば教えてください。
またお返事お待ちしています!
あかし
平田→あかしさんへ
あかしさん、お手紙ありがとうございます。あかしさんの写真集のプレゼントの話は、何度聞いてもグッときますね。本当にすごいことだと思います。特に本の価値については、年齢を重ねた人の方が価値を感じている気がします。プレゼントされたご両親は本当に嬉しかったのではないでしょうか。見せてもらいましたが、すごい豪華本でしたもんね。あれは普通は作らないやつです。笑。びっくりしました。
そして、本と言えば、あかしさんの書店aruの二号店が開店しましたね。おめでとうございます!早く店舗に行ってみたいです。一号店とは違うスケール感なのが写真を通して伝わってきます。大きなチャレンジになるのでしょうか。陰ながら応援しています。
あかしさんには以前にもお話したと思いますが、自分の父親が物書きで物心ついた時から父親の姿を思い浮かべるのは、机で何かをずっと書いたり調べたりする姿でした。父は変わった研究をしており、結局生涯を通して一冊の本を書いたにすぎませんが、その本を書くために一生を費やしていたので、本を出すという行為が、昔の人にとってどれほどの労力の結晶であったかというのは身に沁みています。
父にとってはその本が人生を凝縮した出汁のようなものだったと思います。それをさらっと読めてしまうのが、本の魅力ですね。今は本が身近を超えて、読むのがちょっと面倒なものにもなり、読む人が少なくなってしまったのは、惜しいですね。
そういう私も随分読まなくなりました。あれほど本を読む時間に費やしていたのに、ネットやスマホや動画に慣れてしまい、本に向き合う時間が少なくなったことが悲しいです。この手紙がきっかけでまた本に向き合いたくなりました。読む時間を増やしたいと思います。
お誕生日のこと、ありがとうございます!49歳になりました。今でも思い出すのが中学生の頃に友達に言った「50で勝つ」という言葉です。顔も頭も人並みで取り立てて得意なこともなかった私が、周りの人に勝てるのは50歳くらいだろうと当時思っており発言したのですが「意味がわからない」と一蹴されたことをよく覚えています。
みんなが老け込んだ時に老け込まないことで、少しマシに見えるだろうと思ってました。勝つとかは今は考えないですが、今も健康でいきいきと暮らしているので、何十年かの月日を経て、そのようになっているかな?とは思います。もしかしたらあの時に発した「50で勝つ」ためにやってきたことが今の私を作っているのかもしれません。
「歳を重ねるなかで、変わっていったことはありますか? 」ですが、50で勝つために気をつけてきたことをあげてみますね。
1.物理的に丁寧に自分を扱う。
肌や髪の手入れ、トレーニングなどを習慣化して行ってきた。また食事なども長年気をつけてきており、砂糖や塩、脂肪分の過剰摂取を殆どしてません。お酒は好きなので飲みますが、量と質には気をつけています。家や服や持ち物もそうですね。きれいに掃除してクリーニングに出したり磨いたり、物も丁寧に扱うタイプだと思います。
2.心理的にも丁寧に自分を扱う。
自分のことを貶めるような言葉づかいをしないようにしてきました。どうせバカだからとか自分を卑下する言葉は使わない。ポジティブな声をかけるようにしてます。あと、鏡に向かって今日もかわいいねと声かけしてます。メイクや髪が決まるときは声を出してかわいいー!と褒めちゃってますね。恥ずかしいですが。笑。
これをやるようになって、人に対してもそうなりました。周りの人にもかなり丁寧に付き合うタイプだと思います。だから付き合う人を選んで少数精鋭にしちゃうんでしょうね。全員にはできないから。
3.人を頼る。
子ども達に家事や仕事の手伝いを頼ったり、助けてほしいといつもお願いして分担してもらってます。忙しくてできないからこれをやってほしい。力が出ないから手伝ってほしい。甘えていつもやってもらってますが、かーかはダメだなぁと言いながら皆んなニコニコやってくれます。これこれは苦手でできないからやってほしいなど平気でお願いします。これはここ10年くらいでやっとできるようになったことだと思います。昔は全部自分でやろうとしてました。すごく楽になりました。
4.背筋を伸ばす
これがここ5年で改善した一番大きなことかもしれません。車を運転するときにも、仕事してデスクに座っているときも、立っているときもできるだけスッと立つように意識しています。筋力もいりますが、意識を腹筋と背筋に持っていくようにしたことでかなり雰囲気が変わったと思います。腰痛なども殆どなくなりました。姿勢の改善は見た目だけでなく、気持ちの変化もありました。スッと立てると、スッとするんですよね。笑。
5.最後に今年の抱負を
今年は会社の黒字化です。笑。それが目下のミッションですね。業務を移行している時期で一番大変な時なので、年度の最後にどんな顔をしているかは、経営次第です。でも多分いい年になるんじゃないかと思ってます。チームの雰囲気がとてもよいので今年は仕事が楽しみですね。
ということで図らずも五箇条になってしまったのですが、あかしさんの変わってきたこと5つ、もしくは変えたいと思っていること5つ教えてください! 5つって多いですよね。でも、何々をしたい5つとかって、ネットでも引きが強いし、面白いですよね。5つに括れるならなんでもいいです。笑。ぜひ教えてください!