どんな姿に見えるだろう
- 執筆:わざわざ編集部
- 撮影:若菜紘之
出会いはclassico
東京の谷中にあるclassicoに出会ったのは2010年頃。当時「白シャツはこれと決めて、ダメになったらまた買う」をずっと繰り返せるような定番の1着を探していて、出会ったのがclassicoであった。
それから度々、classicoのブログで気になった商品をメールオーダーをするということを繰り返していたのだが、服以外で購入したものが一つだけある。それが「流木の鳥」であった。何ヶ月か一度、classicoのブログに登場する流木の鳥。ある日どうしても欲しい一羽に出会うことができ、メールオーダーしたのだった。
流木の鳥を作り続ける針原さん
流木の鳥は、東京に在住する針原修さんが30年以上に渡って作り続けている作品である。千葉の海辺に時々行って流木を拾っては、それらを鳥の姿と見立てて、手を加え命を送り込む。
classicoのオーナー・高橋隆さんがあるギャラリーで購入したことがきっかけになり、classicoでの販売が始まった。わたしはメールオーダーを繰り返すうちに高橋さんと段々と言葉を交わすようになって、店を運営していることなどをぽつりぽつりと話すようになり、いつの日か流木の鳥の針原さんも紹介しますよと言葉をかけていただいたのだが、わざわざは所詮パンと日用品の店だという心の引っ掛かりがあり、アートに手を出すことが憚られた。
2019年、転機が訪れた。問touというギャラリー・本・喫茶店を東御市の施設内でやることが決まったのだ。今までずっと仕入れたかったけれど、所詮パン屋という心の拘りがあって仕入れることができなかった商品を一気に買い付けた。その時、真っ先に頭に浮かんだのがこの「流木の鳥」であった。
初の仕入れの際に、高橋さんに案内していただいて、針原さんの工房に遊びに行った。所狭しと並べられた無数の鳥たち。見たことのない大きさや形のものがたくさんある。ワクワクしながら選んでいくと、針原さんストップが時々かかる。思い入れのある作品は手元に置いておきたいんだと針原さんは仰った。
流木の鳥は一体一体がとても個性的だ。台座もそれぞれで、鳥が右向きか左向きかで全く違う印象を受ける。今にも飛び立ちそうな鳥、水辺で遊んでいるかのような姿、大空を羽ばたいているような子たち。共通しているのは、流木がそのままいかされているということ。見る人によって如何様にも見えるのが楽しい。
針原さんは、海に行って流木を見つけた時に、その木がどこの部分にはまっていくのか、ある程度の予測をつけて選んでいるそうだ。拾った時にイメージできていないと作品にならないからと針原さんは言う。できるだけ人間の手を加えず、そのままの形を使って、木を極力削らずに自然の造形を生かしたいと仰っていた。今までほぼ削らず作れたものは5体に満たないかもしれないと。
「大事にするのでこれも買いたい」と子どものように懇願してたくさんの仕入れをして、問touに飾った時の気持ちといったら。感極まったのをとてもよく覚えている。
コロナ禍で仕入れに行けなくなってしまったが、classicoの高橋さんにセレクトをお願いして、定期的に入荷できるようになった。高橋さんにはこの場を借りてお礼を言いたいと思う。こうやって人との長年の関係性からやれている商売について、とても感謝しています。