大らかで美しい作品を薪窯で焼く。
- 執筆:わざわざ編集部
- 撮影:若菜紘之
境 知子(サカイ トモコ)
知子さんは、南蛮の焼き締めや白磁を中心に作陶し、全ての作品を薪窯で焼成しています。 ひとつひとつの形が愛らしくたおやかな形、それに薪窯の力が加わり独特な雰囲気があります。 半磁器、磁器、焼き締め、粉引きと様々な用法で彩られた魅力ある作品達です。
境知子 プロフィール
香川県生まれ
岡山県備前陶芸センターで学んだ後、和歌山県にて森岡成好氏に師事。
1997年 香川県にて穴窯築窯。
2000年 長野県須坂市に転居。
2016年 香川県へ再び転居し穴窯築窯。焼き締め・白磁を中心に作陶している。
久々に二人に会いに行って来た
2019年8月の暑い日、香川県で作陶をする境さん夫妻の元に仕入れと取材を兼ねて訪ねた。3年前に長野県から引っ越すまでは、窯を焚いたと言われたら仕入れにいくといったサイクルで、毎回小一時間かけていくドライブを楽しみにしていた。二人が香川に引っ越してからは毎回、長野に帰省するタイミングで納品をしてもらい一年に一回会うというサイクルになったけど、少し寂しい気はしていた。
境さんご夫婦は薪窯で器を焼いている。薪の確保から薪割り、窯焚き、全てにおいて自分たちで行なっている。わざわざも薪窯でパンを焼いているから、辛さも良さも少しだけわかる。だけど二人は薪窯でないと面白くないしダメだと言う。どうにもならない部分、想像できない部分をある意味委ねるのがいいのだと思う。そうやってやかれた器たちは表情が豊かで、ついついかわいくなって欲しくなる。
知子さんと話す。
知子さんの作る器が好きだ。らしいというのが好きな理由かもしれない。作為があまり感じない。朝から夜遅くまで夢中になって作陶していると聞いた時には、本当にびっくりした。前より制作に関わる時間が増えてるし、家事は仕事で、こっちは遊びっていうフレーズも、毎日がバカンスとか、もうめっちゃエンジョイしててすごくよかった。そこまで無心で作ることに熱中できるのがすごい。禅の世界だなぁと話を聞いていて思った。羨ましく思った。
沢山の会話の中で、知子さんが「やめたこと」がすごく心に響いた。タタラで型押しで作るような器は、力がいって女性の自分には負担がかかるからもう作らない。半磁器はもう作らない。年を重ねていって長く続けられるように全体を整えていく様子がとても気持ちよかった。反対に始めたことも面白かった。素焼きをガス窯にしたり、全て蹴ロクロでやる必要性はなくて、電気には電気の良さがあるからと電動のロクロを兼用したり。知子さん、柔和で素敵でした。
お二人の作品は基本的に再入荷がございません。全て一点ものとなりますので、次回入荷は未定です。一期一会をお楽しみくださいませ。