宝島染工
昔ならではの染色技法や手作業を大切に。
天然染料100%、宝島染工
天然染料ならではの美しさ
化学染料が使用されるようになった十九世紀半ばまでは、全て天然染料で染め上げた物を着ていました。虫よけ・薬効・身分など、実用性から装飾へと染色技術は人から人へつながれていきました。
安価で便利な化学染料に比べ、今となっては貴重となってしまった藍などの天然染料。昔ながらのこの染料ならではの地味な様で鮮やかな彩度ある色、色を重ねる事によって出る色のとろみ、「侘びの味」の様な雰囲気は独特の味があります。
福岡県の宝島染工は、藍染・草木染・墨染など天然染料100%を使用し、伝統の染色技術と加工で服作りを行っています。使い手側の視点にとことんこだわった細やかな気配りを感じる製品たち。袖を通した瞬間から、ふわっと優しさに包まれるような温かみ、脱ぎたくなくなるような着心地の良さが魅力です。
天然染料で染める、という表現。
藍は空気に触れた瞬間からどんどん青くなる
手ぬぐいの美しき染め模様
のどかな田園風景が広がる福岡県大木町。筑後平野のほぼ中央にあるこの地に宝島染工は染工工場を構えています。そこに日本中、世界中から、感度の高いモノづくりをする人たちが宝島染工の染めを求めてやってきます。作り手たちの天然染料で染めるという表現は、想像をはるかに超え、見たことのない染、素材、感触を魅せてくれます。
草木染めを、現代の考え方で
カシュクールブラウス
宝島染工は、いわば「すごい染物屋」。語彙が少なすぎると思われてもそう言いたいくらいすごいです。草木染めで布はもちろん、木、紙、革、なんでも染めます。それはもちろんすごいのですが、もっとすごいのはその運営方法。
草木染めと聞くと「地球に優しい」といったようなイメージで、「少量しか染められない」「すぐ褪色してしまう」「日光に弱い」など、物としての付加価値と共にデメリットも内包していて、それでもあなたは買いますよね?みたいな価値観のやり取りが出てくると思います。
だけど、宝島染工は違う。代表の大籠千春さんは、上記のような草木染めのデメリット自体が好きではないと言います。できるだけ褪色しないように考えたり、できるだけ使いやすいように従来の草木染めの考え方をアップデートして、現代の草木染めを行なっています。
どこから見てもかっこいい服
ワークコート
男女兼用で、誰にでも似合う形の服。宝島染工の服はよい生地、よい縫製、よいデザインです。縫い目は全部隠れており、袋縫いと閉じふせ縫いを多用しています。裏地も通常使われるキュプラではなく、綿がほとんど。ファスナーやボタンなどに金属は使用していません。とにかく肌触りが柔らかく優しいです。着心地がよいということはこういうことなんだなと思います。
淡く墨染した白も、柔らかいイエローやピンクの草木染めもまた美しい。染めの工程で洗いをかけるため色や生地が全体的に馴染み、やわらかい雰囲気に仕上がっていることが特徴の一つです。
新作「KAKU」シリーズ
KAKU Dress
宝島染工の新作「KAKU」シリーズ。KAKUは「しかく」という意味を持ち、生産段階でのカットロスを軽減するため、極力カーブを少なく、直線縫製で構成されています。デザインは着物のような考え方をモチーフにしており、ギャザーやリボンの調整で着こなしやバランスを変えることができます。
- 執筆:わざわざ編集部
- 撮影:若菜紘之
- 最終更新日:2021.11.03