どこか曖昧な染めを暮らしの中に。
- 執筆:わざわざ編集部
- 撮影:若菜紘之
目次
型染(かたぞめ)と筒描(つつがき)で染める、よつめ染布舎。
2019年6月16日、わたし達は大分県国東市にある「よつめ染布舎」の工房を尋ねた。よつめ染布舎の小野さんとの出会いはその1年前。一つの郵便物がきっかけであった。何となく送ってくれたと後から聞いた小野さんの話。型染めの技法を応用しつつ、デザインされた素敵なカレンダーがわざわざの事務所に送られてきたのだ。大好きな芹沢銈介さんを彷彿させつつ、現在的なデザインに一目で好きになった。早速、連絡をしてよつめ染布舎のカレンダーの販売がスタートしたのだった。
その後、福岡のうなぎの寝床に出張で伺った時によつめ染布舎の展示会が偶然開かれており、小野さんにお会いすることができた。カレンダーでは味わいきれなかった世界観に圧倒されて、もっと小野さんの作品を見てみたい。実際に工房を訪ねて制作過程を詳しく知りたいと思ったのだ。
小野さんに会うのは3回目。小野さんが数ヶ月前にわざわざに来てくれて、イベントや商品のことを打ち合わせをしたのが2回目。途中、海辺のカフェでコーヒーを飲んだり散歩したり、国東の風景を楽しみながらドライブをしてたくさん話をした。これまでの経歴、どうしてこの土地で開業するに至ったのか。ポツリポツリ話をする小野さんの言葉に耳を傾けた。
1982年、小野さんは広島で生まれた。旗染めを家業とする家に生まれ、広島のデザイン学校を卒業した後に、旗染めの修行に入った。小野さんは”でっち”と言っていて、いつの時代の話かなと思ったけれど、4年間の大変な修行を全うして家業に入ったそうだ。10代後半から20代前半の多感な時期を家業をつぐための修行に費やすという話は、わたしにとって衝撃的であったけれど、だからこそ小野さんの今のスタイルの礎があるのかもしれないと思った。
ご家族と挨拶し、工房を案内してもらい、明日、作業工程の撮影をしましょうとなって、これからどうしましょうかと相談をしたところで、山に登りに行くことになった。何でも国東半島には軽くハイキングできる小さな山道がいくつもあるらしい。行きましょう!行きましょう!と盛り上がり、カメラマンのワカナンと小野さんと3人でお弁当を直売所で買って、山登りをすることになったのだ。
わざわざはものをものとしてただ売っているのではないと思いたい。出張の際には、ものづくりをしている人達と色々な形でできるだけ深くコミットして、その思いを誰かに伝えていきたいと思う。
2日目。型染の工程を教えていただきながら鶏を絞める。
昨夜のご飯で一番の話題になったのが、命を頂くということだった。小野さん一家はたくさんの鶏を飼っている。かわいいから飼うと言いつつも、卵をいただき、寿命が尽きる前に絞めて食べる。その一連の流れを自然にやっている人たちが結構好きだ。わたしは肉を食べるが自分で絞めるという経験をしたことがない。大切なものを「頂く」という気持ちが知りたかったことを伝えると、じゃあ明日の昼ごはんは鶏を絞めて食べようということになった。近所のおじさんで絞める名人がいてちょうど明日来ると言っていたよと、話がトントン拍子に進んでいく。
型染めの工程1:型のデザインを決めて型を彫る。
型染めの工程2:彫り上げた型紙に紗(しゃ)という細かい網を油性塗料で張り合わせる。
型染めの工程3:糊を作る
型染めの工程4:布を張り準備する。
型染めの工程5:糊置き
型染めの工程6:乾燥
型染めの工程とは関係ありませんが、糊の乾燥を待ちながらお昼に食べる鶏を絞めます。
型染めの工程7:引き染め
型染めの工程8:水洗い
型染めの工程9:完成
命をいただきながら、また喋る。
一連の染めの工程を撮影しながら、鶏を絞めるという前代未聞の取材だった。笑。型染めももちろんすごかったのだが、小野さんの生活そのもののインパクトが強すぎて、ただそれがナチュラルすぎて、ものすごい衝撃の体験だったと思う。なんて言うんだろう。生命力の強さ、力強さ、生きているという実感が作品自体に投影されていて、すごいなと思った。わたしには小野さんの生み出すテキスタイルが日本のものとも海外のものとも言えない、無国籍でかつオリジナルティ溢れる魅力的なものに映ったし、世界観の作り方に圧倒された。型染めは回数を重ねると型がだんだんと甘くなって、それでその曖昧さもまたよしとする感じもすごくいいなと思った。
小野さんとわざわざの付き合いは始まったばかり。これからたくさんの小野さんの作品を紹介していきます。そうそう、わざわざの2店舗目の問touの暖簾。小野さんの型染めの暖簾なんですよ!ロゴデザインももちろん小野さん。これからもよろしくお願いいたします!
よつめ染布舎×わざわざ
実演で造られたオリジナル。
2019年の9月によつめ染布舎の小野さんに問touへ来ていただいて型染めの実演。道具から工程について直接お聞きすることもでき、より型染の世界を知ることができました。この実演でわざわざのオリジナルテキスタイルを作ってもらい、形を変え様々な素敵なプロダクトになりました。