ずるせず、無理せず、おいしい結晶がまたいちの塩
- 執筆:わざわざ編集部
- 撮影:若菜紘之
またいちの塩との出会い
新三郎商店の代表的な商品が「またいちの塩」です。もともと懐石料理の料理人であった平川さんが辿り着いたのが塩です。おいしい塩を自分で作りたいと、きれいな海水を求め糸島に辿り着き創業しました。海水を汲み上げ天日干しをし、旨みを凝縮させた後に薪窯で焚き、さまざまな種類の塩を作っています。
その塩をかけて食べる塩プリンが大人気となり、糸島の塩作りをしている「工房とったん」の店舗には週末に大行列ができるほどです。
ちなみにまたいちの塩の「またいち」はお父様のお名前から取ったそうです。会社名である新三郎はお祖父様のお名前です。その他の経営するお店の名前もご家族のお名前をとったものが多いそうで、親しみが湧くネーミングの秘密はここにありました。
取り扱いしないからするへ。
初めて出会った時に、丁寧に塩を作る工程を説明していただきました。わざわざは薪でパンを焼いていますので、同じく薪で食品を作る者として薪談義に花が咲き、名物の塩プリンを食べ、塩を買い物させていただき楽しく帰路につきました。ですが、当時は取り扱いすることにはならなかったのです。
わざわざには食品選定基準がありますが、その中に無理のない価格帯という基準があります。塩は毎日使うものですから、わざわざが取り扱っている塩よりも一段階高く、またいちの塩は毎日使うには少し高すぎるかもしれないと思ったことが要因でした。ただ、本当に奥行きのあるおいしい塩だなと感じており、塩を作る過程もこだわりも共感しており、基準をどこまで守るべきかと深く考えるきっかけになったのです。
2022年になり考え方も変化し、この度、またいちの塩を取り扱いをすることになりました!塩の種類が違うということや、使うシーンを変える、特別な塩として食べてみる、塩を楽しむなど平川さんとお話しするうちに、やはり皆さんに新三郎商店の取り組みとともに伝えたいという気持ちが大きくなっていったのです。そして、何よりおいしい塩を味わっていただきたいと思ったのです。
おいしい塩はどのように作られる?
糸島半島の突端にあるまたいちの塩作りをするための「工房とったん」。ここは玄界灘の外海と内海がぶつかり合う塩作りに最適な環境だと平川さんは言います。海と山のミネラルを豊富に含み、周辺民家が少ないため生活用水が入らないきれいな海水を使うことができます。
海水を汲み上げてから1ヶ月ほどの期間をかけて、手作りで作られる塩がまたいちの塩です。平川さんにとって「おいしい塩」とはどんなものですか?とお聞きすると、こんな答えが返ってきました。
「そもそも塩がおいしいというよりも、塩によって素材の持っている味が引き出され、その、選ぶ塩によって料理がおいしくなると考えています。それをうまく引き出す役目を担う唯一の調味料が塩であり、間違いのない塩を選ぶことで、素材の味を楽しむことができるんです。
海水を汲み上げて塩の結晶を掬いあげるまで、ずるをせずに、無理強いをせずに、おいしい部分だけを抽出した結晶がまたいちの塩なのです。
調味料として素材と向き合う塩は、海水のおいしいところだけを結晶化させています。しっかりとミネラルや栄養素を蓄えたまま食卓に届くように、僕たちは 日々変わる天候や季節と対峙しています。」
ねっ?どんな塩なのか、食べたくなるでしょう?
おいしい塩はどう食べる?
さて、新三郎商店の取り組みは、海から山へと移ります。広大な土地の古民家を改築して、平川さんも自ら厨房に立つこともあるゴハンヤ イタルや、sumi cafeや自社で運営するセレクトショップなどが併設された施設を見学させていただきました。美しい庭と古民家が点在する気持ちの良い空間が広がっています。
このあともBBQした素材に塩とオイルをかけていただきながら、平川さんのお料理を堪能して、わざわざチームとまたいちチームの楽しい交流会となりました。この後にすっかりこの食べ方が気に入ってしまい、家でもこの塩を使った料理にはまっています。
週末だ!BBQだ!#突然社長の晩ごはん pic.twitter.com/Ml2Udqyhrs
— わざわざ問う人 平田はる香 (@wazawazapan) July 30, 2022
目玉焼きなどのシンプルな料理、野菜の味を引き立てたい時、少量のまたいちの塩が素材の旨みを引き出してご馳走にしてくれます。野菜やパスタを茹でるとか、漬物を大量に作りたいという時は、他のお塩に役割をお任せして、まずは「かけて食べたい」「引き出して食べたい」という時に使ってみてください。あと、やはりそのまま持っていけるパッケージがすごく便利でかわいいです。手土産にもぜひどうぞ。
白身魚のお刺身にまたいちの塩とオイルは絶品です。ぜひお試しいただきたいです!
平川さんの行動力と推進力は何もなかった糸島の突端に変化を与えています。現在、工房とったんの周りには店が増え、若い人たちが移住し、少しづつ地域が変容しています。わざわざも同じ辺境地の会社として、お互いに情報交換しながらこれからも一緒に協力しながら様々な取り組みができたらと考えています。平川さん、今後ともよろしくお願いいたします!