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カート

カートが空です

これからのお店について話そう

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こんな辺鄙な場所で、こんな時勢の中、この小さな扉を開けて店に訪れてくれた方が今年は1万人おりました。スタッフ一同感謝申し上げます。本当に遠くまでご来店をありがとうございました。姉妹店の問touやオンラインストアも合わせて換算すれば、もっと多くの人が訪れたということになりますが、やはりここは山の上のパン屋らしくこの店「パンと日用品の店わざわざ」に訪れた人で括ってみます。

  • 執筆:平田はる香
  • 撮影:若菜紘之
  • 編集:鈴木誠史

これまでの感謝を込めて。

実店舗とオンラインストアが共に成長してきた店

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コロナ禍で店舗に人が来なくなり、オンラインストアに人が流れたなんて話が、ゴロゴロとそこら中に溢れていて、そのうち店舗なんてなくなってしまうのでは?という不安まで囁かれている中、実店舗って何なのでしょうね?店の意味合いってどこにあるんだろうね?と考えることが増えたような気がします。

わざわざは2009年2月に移動販売からスタートしました。2009年9月に自宅店舗、2012年3月から今の店舗をハーフビルドで建てて、増改築を繰り返して今に至ります。店舗運営と並行してオンラインストアの売上を伸ばし、利益が出ると店舗にフィードバックして、わざわざこの地まで来てくださった方に「ありがとうございます」の感謝を込めて店舗に還元していきました。実店舗とオンラインストアは双方向で交流を図って、共に成長してきたという意識があります。

これまでの買い物

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かつて、日本での物の流通は物々交換が主体でした。米と野菜、魚と肉など、自分が得ることが難しいものと、自分が持っているものを交換することで欲しい物を手に入れていました。その後、比較的価値が下がりにくいもの(布・塩・貝・砂金など)と交換する物品交換が始まり、最終的にお金が普及していきました。現在は働いた等価として賃金を得て、欲しい物を買うということになりましたが、実際、日本だと戦後の話でしょう。

わたし達は今、ものに溢れた社会で暮らしています。欲しいものは世界中のオンラインストアですぐに見つけることができます。欲しい物はほとんど家に居ながらにして手に入れることができるのです!なんて素晴らしい世界なんでしょう。とは思わなかったです。コロナ禍でも。もちろん便利であったし必要であり、恩恵をありがたく享受しましたが、満足感や幸福感はそこまでではありませんでした。テイクアウトの食事も同じように感じました。ありがたかったけれども、レストランで語り合うようなことができなくなったことに目眩を感じたのです。

その場所に行って、手に入れるまでの過程に価値があったことにより気付かされた一年でありました。そこで買ったものに、その場所の空気や匂い、気温までが含まれていたこと。楽しい思い出がその味を何倍にもおいしくさせていたこと。期待はずれであったことも今では懐かしく思いだせたこと。手に入れるまでの過程が失われた買い物は、ただの買い物だけでしかなく、買い物をする「体験自体」は失ったと気づきました。

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わざわざは11年前のオープン当初から、体験価値の高い店を意識してきました。交通の便は悪いのですが、周辺環境のよい場所に位置しており景観が抜群です。店内の商品陳列などが工夫されており、至る所にお客様を楽しませるような配慮がある店であったからこそ来ていただけたと思っています。だけど、それはもう終わりです。皆が皆、これから体験価値の高い場所を作って店舗をやろうとするからです。大体、そうなんです。社会的インパクトの強いことが起きると、今まで考えてなかった人たちも一斉に考える必要性が生まれて、今までなかったことに関心を向けていきます。

駅前の商店街が繁栄していた時代から、郊外の大型GMS(イオンやイトーヨーカドーなどに代表される総合スーパー)に人が流れた時代。画一化された買い物構造が嫌なわたしのような人間は、GMSには流れずに孤立した個人商店(独立系店舗)を探しに出かけました。インターネット上にも同じことが起こっています。楽天やYahoo! Amazonなどの大型モールで販売を選ぶ人、購入する人、そこに飽きたらない人は個性あふれる独立系店舗に流れます。山の上のパン屋のような店に、これからなろうとする人たち。

個が個を叫び、ストーリーだとか体験だとか皆んなが皆言い出したら、大抵終わりが近づいている印しです。ストーリーがない商品などこの世に存在しないのです。大きな資本が体験価値が高い場所を作ることにやっきになっていけば、わたし達は駆逐されるまでです。スターバックスなどの店舗の作り方などもまさに体験価値を作り出していると思います。これからをもっと深く考えなければなりません。

これからの買い物について

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では、わざわざはどうするんですか?と聞かれそうですし、聞かれます。正直、これと言った変わったことを考えているわけではありません。体験価値の高い店が増えること自体は素晴らしいことですし、独立系店舗の活躍は個性が光ってもっと楽しくなるんじゃないかと思っています。

チェーン化された没個性の店が、全国どこにでもあるから安心だというスタイルは廃れていくのでしょう。行くべき理由が必要になりましたし、わたし達はそれに慣れ始めています。生きる道があるとすれば現在のスタバのような形だと思います。今後チェーン店系は、その地に根付いた形のチェーン店に移行していくのかなと思っています。

で、ですね。コツコツやることにしました。今までのわざわざという会社はぼんやりと体験価値を提供した風であったり、そこはかとなく薪窯でパンを焼いていたり、大体みんなわかるよね?という察してください的なPRでだめだったなと反省しています。健康が大切なことを社会に訴えるという行動を、敢えて取りませんでした。何故なら、強いポリシーを打ち出すことがマス層に敬遠されると危惧しており、おいしいや楽しいをシンプルに打ち出した方が波及効果が高いと考えていたからです。強いこだわりは時に人を跳ね除けます。

ですが、時代は常に変化していきます。これからはしっかり主義主張していくことが望まれていくと考えています。わたし達はポリシーが明確な会社です。それをきちんと社会に対してアプローチしていくという行動を取っていきたいです。ふんわりとした中に埋もれない、わざわざらしいやり方を作っていきます。

まず、会社として人格をもっとはっきり持ちたいというのが来年の目標になります。お客様がわたし達の店で買い物をすると、社会に対してこういうアクションを起こすことができるのと同意義ですとか、もっとわたし達のやっていることをわかりやすくまとめて見せていくということをやっていきたいです。

これからの人・お店・会社の発展について

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小売でものを販売するという形態を11年やっていて思うことですが、人を育てるということが本当に難しいです。専門店やメーカーだとポリシーが共有しやすく、商品知識の面でも覚えることが単一化されていて教育もしやすいですが、スーパー的な多品目を扱う小売となると商品知識も全てにおいて幅広く、スペシャリストになるのが本当に難しいです。ここが最近、要だなと思っています。

人材のスペシャリスト化ができると実店舗にくる意義というのが格段に上がります。買うに至るまでの相談や、ものを買った後のアフターフォローなどがセットになり行く価値が高まります。専門店やブランド・メーカーではそれが体験できますが、多品目でそれができたら自分もぜひ行きたいと思います。なので、もっと力を入れて取り組みたいです。

また人材育成は企業の成長過程において外せない問題でありますが、クリアできる企業も相当少ないと思ってます。システムや設備装備、売上高などをある程度の理想に持っていくことは難解ではないと思いますが、人事育成システムは会社運営の中でも難易度が高い課題だと考えています。採用から育成のフローがしっかりできていない企業は、人口減少やAIなどの発展でどんどん厳しくなっていくでしょう。

育成が強い会社はきっと残ります。プロフェッショナルを育てることができればかなり強いと思います。現在、仕事ができると思っている人たちもこれからかなり厳しい時代がきます。できるがただできるというレベルだと淘汰されると思っています。レジ、なくなってきてますよね?他の仕事もそうやってなくなることは想像に容易いです。会社の規模が小さい今だからこそ、育成システムを整えていきたいと考えています。

それから、信頼できる会社と共に協業する取り組みを増やしたいと考えています。中小企業が連結していくことで、真の強みを発揮できるのでは?と考えています。

わざわざはこれから、オンラインストアでも実店舗でもスペシャルを目指し、お金と物を交換する以外の価値を作ります。これからはもっと、わざわざで買う意義がある店になりたいです。こだわりをもっと強く外に表して(あんまりやりたくはないんですけども)、もっと細かく突き詰めることが必要だと感じ始めています。まやかしやまがい物ばかりで、本物が遠い世界にはしたくないのです。もっとちゃんと伝えることから始めます。長くなりましたが、今年も一年ありがとうございました。みなさん、よいお年を。

平田はる香

2009年長野県東御市の山の上にパンと日用品の店「わざわざ」を一人で開業。2017年に株式会社わざわざ設立。2019年東御市内に喫茶/ギャラリー/本屋「問tou」を出店。2023年度に3,4店舗目となるコンビニ型店舗「わざマート」、体験型施設「よき生活研究所」を同市内に出店。また初の著作「山のパン屋に人が集まるわけ」が2023年にサイボウズ式ブックスより出版された。趣味はボルダリングとよき生活。

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